RFID在庫管理システムとは

RFIDタグを使用した在庫管理を行うには、RFIDタグの特徴と、バーコードやQRコードの違いは何かを理解することが必要になります。

RFIDの種類や構造の基本情報の紹介

RFIDとは「Radio Frequency IDentification」の略称で、RFIDタグを読み取るハンディーターミナルやリーダー、アンテナのハード機器やRFIDタグなど読み書きをする情報媒体を含めた総称としてRFIDと呼びます。また交通カードのSuicaなどの非接触ICカードも広義のRFIDとなります。

タグ自身の呼び方もRFタグ電子タグICタグRFIDタグ等の呼び方があり、JISで定められた呼び方は「RFタグ」となっていますが、弊サイト内ではネットやニュースなどで一般利用ユーザーの認知度が高い「RFIDタグ」や「ICタグ」という呼び名でご紹介しています。

RFIDタグは、データを読み書きできるICチップに金属製のアンテナを接続した構造となっていて、この構造には電波方式(UHF帯)電磁誘導方式(HF帯)があり、それぞれの構造には特徴がありますので、導入する運用に合わせて選択をする必要があります。

UHF帯とHF帯の違い

RFIDを使ったシステム導入のポイントとなるのは、運用の業務体系にあったRFIDタグを選択して導入することです。またRFIDタグを利用するにはタグ情報を読み込むためのリーダーと呼ばれる機器が必要となります。

そのためお客様の運用用途によって導入するRFIDタグやリーダー、アンテナ等の機器が変わってきます。

ここでは二種類のRFIDタグ、UHF帯とHF帯についてそれぞれの特徴をご紹介したいと思います。

UHF帯 HF帯
方式 電波方式 電磁誘導方式
読み込み距離 通信距離が長い

※高出力のリーダーを使うと数m離れても読み取り可能
通信距離が短い


※数十cm程度
読み込み速度 早い 遅い
単体タグの読み取り精度 読み取り距離が長いため、一度に複数のRFIDタグの読み取る場合がある 読み取り距離が短いため、単体のRFIDタグの読み取りが確実

バーコードやQRコードとRFIDの違い

バーコード/QRコード RFID
同時読み取り 一点一点読み取り 複数を一括して読み取り
読み取り距離 距離が離れると読み取りできない 距離があっても読み取りできる
対象との隔たり 障害物があると読み取りできない 障害物があっても読み取りできる
汚れの影響 読み取り出来ない 読み取りできる
保存データ量 データ量が少ない/多い データ量が多い

※UFH帯はQRコードより少ない
データ
書き換え 不可能/多い 可能(種類による)

私たちが目にするバーコードやQRコードを利用したシステムとRFIDを利用したシステムでは何が違うのでしょうか?特徴を比較しながらご紹介したいと思います。

RFIDの大きな特徴として、「複数のRFIDを一括して読み取りできる点」「離れた距離から読み取りができる点」、読み取りするRFIDとリーダーの間に「障害物があっても読み取りできる点」「汚れがあっても読み取りができる点」です。

RFID在庫管理の考え方

RFIDタグやバーコード・QRコードの違いを理解したところで、次はそれをどう在庫管理システムに適用するかになります。
先ほどご説明したとおり、「バーコード」はラベル等に印刷されているのですが「スキャナー」や「ハンディターミナル」と呼ばれるデータを収集する機械でバーコード情報を直に読み取り、データとして利用します。

「RFID」はアンテナから電波を出すため、電波を読み取る「RFID式ハンディターミナル」や「卓上式RFIDリーダー」でRFIDタグのデータを読み取ります。
そのため「バーコード」の場合は「バーコード」が印刷された部分を一点一点読み取る必要があります。RFIDの場合は電波を拾いさえすれば良いため、一括してまとめて読むことが可能です。

また「バーコード」は認識の条件から、近い距離で読み取る必要がありますが、RFIDは電波が届く範囲であれば遠い距離からでも読み取ることが可能です。この違いを必ず理解した上でRFID在庫管理システムのメリット・デメリットを紹介していきます。

RFID在庫管理システムのメリット

  • ①先ほどご紹介した通りRFIDは対象となるデータを一括して読み取ることが一つのポイントであるため「箱に入った製品を丸ごと読み取る」「台車に載せた段ボール箱をまとめて読み取る」という、バーコードではなし得なかった離れ技の運用も実現します。つまり、棚卸のような帳簿在庫の現物照合作業は威力を発揮します。
  • ②またRFIDアンテナの上にRFIDタグを貼付した製品を置いて管理しておけば、製品を取り出したタイミングで在庫数の減少がリアルタイムに判明する在庫管理も可能です。
  • ③なお電波を飛ばすというポイントから、棚卸しなどの作業時に紛失した品を探す場合に金属探知機で宝探しをするかのように、紛失物を探し出すことも可能です。
  • ④その上、段ボールを開梱して中身を一点ずつスキャンして、スキャン後に再度梱包していた作業も、RFIDに切り替えると中身の情報が分かるので開梱・梱包の作業いらずとなります。

このようなメリットを考えるとRFIDタグは貼れる比較的大きなモノで、入荷や出荷のようなまとめて数量チェックなどをおこなう業務に向いています。

RFID在庫管理システムのデメリット

  • ①タグ自体がラベルより高価であるため、管理する対象が安価であるものには不向きです。
  • ②また細かいモノを箱にまとめて保管しているものも不向きになります。
  • ③狭いエリアで様々なモノを管理している場合、電波がいろいろなところに届くのでアプリケーションが煩雑になります。
  • ④管理する対象が金属だったり、水系のものだったりするとタグの種類が様々で運用が煩雑になりやすくなります。

このようなデメリットを考えるとどのロケーションからどのモノを入れた・出したというような入庫・出庫は、バーコードやQRコードを使用した在庫管理システムが向いています。

まとめ

在庫管理は、在庫の見える化・在庫の圧縮を実現することで、不要在庫・滞留在庫の状況や過剰在庫を明確にして、資産の廃棄を減らし適正な在庫量を保つことが必要になります。そのような管理で、キャッシュフローの改善と評価損を減らすことに繋がります。

また、各業務の作業効率を考えた場合に、どの業務ではRFIDタグを運用し、どの業務ではバーコード・QRコードで運用するのかの業務設計が重要になります。すべてRFIDを導入すれば、問題解決とはならないことを理解していただければと思います。